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2007/08/01

与党の現実、野党の現実

政治的な「現実」は既成事実積み重ねであり、そしてその既成事実を積み上げることができるのは政権政党だけである。
その意味からすれば、その「現実」に責任を負うべきは与党であり、野党ではない。

しかし、そうはいっても政治は「現実」から始めるしかないのである。
「そんな現実は俺たちが積み上げた現実ではないのだから知らないよ」なんて無視するわけにはいかない。

自らの理念とその政策に沿って進められてきた「現実」を継承すれば良い与党と、そもそもが理念に沿わない既成事実(前提)を出発点としなければいけない野党では「現実」は全く違う様相を帯びる。
野党が現実的であろうとすれば、好ましくも無い既成事実を与党が積み上げる度に、野党は自身の理念からは離れ、流動的にならざるをえない。

かといって、あまりにも現実的であることに固執すれば「違い」を示すことはできず、その存在意義を失う。
良いか悪いかは別にしてヨーロッパで左翼がその存在感を保っているにもかかわらず旧社会党(現社民党)が自社連立によりその存在意義をまったく失ってしまったのもそういう部分があったと思う。(もちろん社会主義国の崩壊も大きな要因だが)

「現実的」であることを至上命題にすれば、よほど与党がボンクラでない限り(与党との理念の違いを維持しようとする)野党が与党よりも現実的であることなどありえないのである。

田原総一郎氏などがよく「現実的であれ」といいながら「違いが分からない」なんて事を口にするけれども、それに答えられる野党なんてものは(与党がボンクラでなければ)あるわけがない。

それを分かっていながらそれを口にする田原氏というのは、つくづく意地の悪い人である。

そもそもが「与党よりも現実的」で「政策の違う政党」などというものは無いものねだりであり、だからこそ今の自民党がどんな問題を引き起こしても政権与党を支配し続けることができたのであろう。

野党は常に「現実的」であることにおいては与党に及ばない。
政策の違いが明確であればあるほどそうである。
その及ばない分のアドバンテージが無ければその壁を乗り越えることはできない。

今回の参院選はその「自民党のボンクラぶり」が突出した選挙だった。(ほとんど自爆)
そのアドバンテージにより、「存在意義を維持」することで「現実的であること」に劣る部分に有権者が猶予を与えてくれるかどうかにかかっているのだと思う。

おそらく、与党は野党の政策が「現実的でない」事を指摘し続ける。
そして、野党の政策が与党の政策に歩み寄るようにしむけるだろう。

もし、そこで野党が「現実的でない」というレッテルを恐れて与党案に引き寄せられればしめたものである。
逆に、もし違いを明確にしたい野党がそれに応じなければ「現実的でない」のレッテルを貼ればいい。

いずれにしても「現実的」と「存在意義」の間にある「野党のジレンマ」を利用しない手は無い。

このような攻防は既に憲法改正案で既出である。
民主党は護憲派を抱えながらも、与党が積み上げてきた(好ましくない)「現実」を認めない限りは「現実的でない」という批判を受けざるを得ない。
「政権担当能力」を示したい民主党の現実派にとっては「現実的ではない」のレッテルはなんとしても避けたい事であったろう。
その結果、与野党で「現実的」な改憲案を調整していったのはいいが、最後の最後になってそれが「違いの無さ」=「存在意義の喪失」であることに気が付き、あれこれ理由を付けそこから離脱しぎりぎりのところでかろうじて「違い」を保ったのである。
私はそう見ている。
おそらくあのまま進んでいたら選挙を前にして民主党の存在意義は霞んでしまっていたことだろう。(同じならば自民党でもいいのである)
当然与党からすれば民主党の逃亡は非難すべき「背信行為」であり、「党利」であり、結果的に民主党の政権担当能力に少しは傷をつけることができた。
これに限れば、与党の勝ちであり、このような攻め方をできるのが与党という立場が持つ強みである。


おそらく、これに似た今後の大きな攻防は「イラクテロ特措法の延長」になるのではなかろうか?
小沢代表がこれに反対すると明言しているからである。(本気ならばぜひ応援したいが、小沢代表のことなので何かの取引材料にする恐れはあるが)

民主党は当初から反対したとは言え、与党(自民党)が延々と積み上げてきた「日米関係」という巨大な「現実」の上に決定されたインド洋、イラクへの自衛隊派遣という経緯を持った既成事実に挑むことになる。
「特措法を延長しない」のは今の日米関係を考えれば「現実的でない」として最もレッテルを貼りやすい事案である。
安倍首相とてこれまでの経緯があるので信頼に関わる妥協できない事案であろう。
「日米関係の現実」を乗り越えるリスクに国民が猶予を与えるだけのアドバンテージを築けるかどうか・・・

民主党にとってはこのあたりが正念場になりそうな気がする。(その前に安倍首相がつぶれてしまう可能性もあるけど)

【追記】
民主・前原氏、「テロ特措法延長必要」と発言
これがまさに
>もし、そこで野党が「現実的でない」というレッテルを恐れて与党案に引き寄せられればしめたものである。

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コメント

こんにちは。
お元気ですか???
参議院戦、民主党の大勝でしたね。
座り心地の悪さを感じてなりません。
と、言うのもこの選挙結果、国民の自然発生的な願い、思いというよりは何やら意図的・作為すら漠然と感じるのです。
安倍さんの政権は間違いなく末期です。
だがしかし、では次の手はと言われると手詰まりです。
そんな閉塞した思いを漂わせる今回の選挙は、一筋縄で行かないものを感じます、、、
この結果が「政治不信」へと一挙になだれ込まないように、野党にはしっかりと踏ん張って頂きたいものです。
今後に注目ですね。
では、、、、またね。

投稿: せとともこ | 2007/08/02 15:30

瀬戸さん こんにちは
今回の選挙、与党の大負けがほぼ間違いなかったので久しぶりに応援したい人にそのまま投票しました。
あまり生きた票にはならなかったようですが・・・
私は、民主党の若手(現実派)は利に聡すぎてあまり好きではないのですが、「特措法の延長」に反対をすると言う小沢さんが実際どこまでやるか見てみたいと思います。

小沢さんが真っ先にこの法案に言及したのには、正直言って驚きました。
この事案ならば野党も結束しやすそうだし、与党との違いも明確になりそうですから。

それによって固く信じている環境が少しでも変わらないだろうかと内心少し期待しています。
環境が変われば現実も変わる。
「現実性が無い」と言われたことが一つでも「できるじゃん」になれば、人の意識も代わってくるんじゃないかな・・・と。

今は少しでも望む方向に既成事実が積み上げられればいいなと思っています。

甘いかもしれませんが・・・

投稿: FAIRNESS | 2007/08/03 00:19

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