建前としての「根本」
明治維新を経験した普通の人々はどのような部分に拒否感を持ち、どのような部分を素直に受容することができたのだろう。
それともそのような拒否とか受容とかそのようなものがあったと仮定する事自体が合理性に浸っている私の間違いで,変化そのものを受け入れる事をただ単に自然に良しとしたという事もあるのだろうか。
技術としての「合理性」、例えば蒸気機関を目にしたときには当然驚きはあっただろうが、その取り入れは速やかに行われたようだという印象はある。
そこに「便利」である、とか「有用」であるとかといった印象を持ったであろう事は想像できるのだが、「合理性」に「是非」「良し悪し」を問う感性、習慣はあったのだろうか。
大日本帝国憲法をはじめとして、あらゆる列強のシステム取り入れに関して「原理」「根本」がどれだけ関心を得たのであろうか?
とりあえずは近代国家としての承認に向け「形」を,実力を養う為に合理性が生み出す「有用性」を獲得する事が第一義であって、いずれもそレを生み出した「根本」「原理」、つまり思想については(それまでの日本的な思想が加味されたとは言え)その手法は必要とされる「形」へのつじつま合わせの様相が濃かったのではなかろうか。
根本・原理からもたらされた「結果」「成果物」といった「形に成ったもの」こそが重要で、そこがすべての「前提」(原点)だったのではないかと想像したりする。
外国船の出没や黒船がなかったら国家の態(求心力)を整える為に国学や尊王思想が幕府を超えて正当化される事もなかったのではなかろうか。
敗戦(終戦)時においても同様の外圧による価値の変化を経験している。
大きな抵抗もなく、むしろ疲弊していた国民はそれを肯定的に受容したようにも思える。
そこでもやはり、(戦後強調された民主主義、個人の自由・人権とかの)「根本」「原理」はさておき(経済における自由,民主主義といったフレームワーク)「形」「有用性」の取り入れにその重点が置かれ、その取り込みの速さが「驚異的復興」を可能にした一方で「根本」「原理」が置き去りにされたようなところがあるのかもしれない。
そして、そのフレームワークの中で復興,発展,富の獲得が「経験」される事でますます「根本」も「原理」も顧みる機会が失われたという事もあるかもしれない。
何ゆえ民主主義なのか、何ゆえ自由なのか,何ゆえ人権なのかを問う切実な必要性が無く、
民主主義が良いのは民主主義だから、自由が良いのは自由だから、人権が良いのは人権だから
としても多くの人々にとってそれほどの不都合が無かったのかもしれない。
明治期も敗戦(終戦)直後も「根本」「原理」を考慮する余地があったかどうか、当時の状況を考慮すれば、そのいずれにも「是非」を問うのはナンセンスなのだろうとは思うけど,かといって「そうせざろうえなかった」ということとその事が現在に関係有るか無いかというのは別問題だ。
そのような経緯が現在にどのような影響を与えているのか、または与えていないのか
元来日本人の観念の中で「根本」「原理」が欧米人のそれと同じような位置を占めているのかどうなのか
ことによると、このあたりをあまり固定的に致命的に捉えようとしないところがむしろ日本人の「根本」?
なんて事を、今の日本の状況を頭に浮かべつつ考えてしまう。
特定のロールモデルに頼ることが難しい今の世界だから,なおさら「根本」にかかわるこのあたりの事に関心が向く。
「人権」「自由」「民主主義」を生んだ「根本」「原理」を「形」「有用性」だけで計ろうとする試みがここに来て矛盾として社会に現れてきているような...
(宗教国家の様相を持つ)米国に対しての事で言うならば西欧から「派生」した宗教的なもの(ピューリタニズム)「根本」「原理」から生まれた「経済的自由理念」を「形」「有用性」だけで計ろうとする試みがまた矛盾を生み出しているような...
つまり先進欧米諸国では「当然」で「あたりまえ」の事を「根底」では建前としか受け取れない事から生ずる矛盾(見えない壁)が現れ始めたような...
おそらくこれは、日本に限らず非西欧諸国に共通して起こり得る事かもしれないが...
仮にそうであったとしても西欧思想の「根本」「原理」を中心にして世界が廻っている事は変らない訳で、これに「対立」を持ち込めば戦前の繰り返し、「放置」しても矛盾が社会の信頼を失わせるだけに思える。
こんな時期だからこそ「極端な是非」(明確さ)に惑わされず、西欧,非西欧も考慮しつつ「融合」「包含」を試みなければならないのだろうなと思う。
ごく限定された知識しかもたない私がメタ的にそう感じるだけのことで、実際にこのようなところに現在の問題の「根」があるかどうかなんて当てにならないが、あってもそれほどおかしくは無いように思ったので・・・とりあえず書いてみた。
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