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2004/07/23

分離フェンス撤去

もう少し前になってしまったが、20日国連総会にてイスラエルによる「分離フェンス」撤去に関する国連決議が
賛成150 反対6 棄権10
の圧倒的多数で採択された。

この分離フェンスはイスラエルの入植地を囲い込むような形で西岸内部に大きく食い込むような形で建設されている。
イスラエルが一方的に建設するフェンスにもかかわらずイスラエル側ではなく自治区側(グリーンラインの内側)に建設しているのだ。(地図参考リンクhttp://plaza17.mbn.or.jp/%7ECCP/wall/map/map.html
イスラエルが主張する分離フェンスの建設理由はハマス要人を国家が堂々と暗殺したのと同様「テロ対策」。
しかし、そのような理由は口実でしかないだろう。
イスラエルは以前から西岸に無法に「入植地」という既成事実を作り上げてきた、そのあげく入植地の保護を名目にこのようなフェンスをパレスチナ側を取り込む形で建設し、この既成事実をより確かな事実に仕上げようとしている。
実情はこれにとどまらない。
入植地を取り囲むように建設された事により、分離フェンスは西岸地区に住むパレスチナ住民の生活をも分断している。
これまでまっすぐ行けた病院,商店、職場などに行く為に、はるか遠くにある検問まで迂回しなければたどり着く事もできないと言う代物なのだ。
さらに、パレスチナ人の農地を勝手に分断し、取り上げ、まともな農業をする権利さえ奪っている。
「入植地」により歪になった地区に住むパレスチナ人はその生活を脅かされ続ける事になる。
予定の分離フェンスが完成した暁にはパレスチナ自治区は一部を残し完全にフェンスに囲まれる事となる。
そこから、次のステップを予想するのは簡単な事だ。
「パレスチナ人をそこから追い出す。」
仮にそうでなくとも,パレスチナ人がそう受け止める事に何の不自然さも感じない。
日本の暴力団によるバブル期の「地上げ」の手口を想像させるが、さらにその上を行く。

今回の国連決議は、このような非人道的な「地上げ」行為に対し、その行為を止めるように求めた物。
結果は圧倒的多数で可決したわけだが、そんな中でイスラエルのほかにも反対する国がある。
その反対の先頭に立つのがイラク戦争当時、イスラエル一辺倒の政策に対する批判をかわすためにパレスチナ新和平案(ロードマップ)を掲げ仲介を行なったアメリカ(ブッシュ政権)だ。

パレスチナ新和平案(ロードマップ)を提案しておきながら、イスラエルの入植地をアメリカ大統領としてはじめて容認し、一方の当事者の要人殺害を「テロ対策の一環」としてこれも容認、さらにイスラエルの一方的なガザ地区からの撤退(これはロードマップの趣旨に反する)を支持、と仲介者である事を放棄しイスラエルに肩入れした一連の経緯を見れば「やはり、批判をかわすだけのただのポーズだった」と見られても仕方が無いだろう。

すでに、アメリカは「正義」を装う事すらかなぐり捨ててしまったのだろうか。
イラク統治の行き詰まりで国際社会に配慮を示しはじめたかに思われたが、この件を見る限り国際社会を無視した単独主義は何も変わっていない。
この姿勢は米国政府の「決議案の内容は一方的」というコメントを見れば明らかなように、圧倒的多数に対し尊重する意思が全く見えないところに良く現れている。
イラクでの反米感情はもちろん、イスラム諸国の反米感情にもパレスチナ問題は大きな影響力を持っている。
ユダヤ資本、マスメディア支配、キリスト教原理主義との共通性・・・様々な理由があるにせよ、このような誰が見ても分かる事をアメリカ政府がわからないはずは無い。
「平和を好む大統領」をアメリカ国内に向け振りまいているようだが、中東に於ける力による支配への欲望は減退することなく増大しつづけているようだ。
「テロとの戦い」は中東支配の為の口実、中東支配に必要な「中東への楔」としてのイスラエル擁護、と見ても何ら差し支えないように思われる。
今,アメリカはイラクにおこなったことと同じように、根拠の曖昧な難題をイランに向けぶつけている。
アメリカ政府はイラクでの失敗程度で止まるつもりは無いのである。

国際貢献のためにイラクに自衛隊を送っているなどと言う『幻想』からいい加減目を覚まさないと、今後起こりうる後戻りのできない「連鎖」に引きずり込まれる可能性は否定できない。
鼻先に「常任理事国入り」をぶら下げられ、食いつくようなカモにならぬ事だ。

パレスチナ問題は「武力を持たない事は理想である」と語る以上に「武力による平和構築などは妄想である」ということを目に見える現実として我々に提供している。(イラク統治にも云えるが)

我々にとってパレスチナ問題は地球の裏側で起こっていることとしか受け止められないようであるが日本および極東地域の将来を考えるうえで、「何が本当の現実か」を学ぶ教材が凝縮されているのではないか。

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コメント

パレスチナ問題はアメリカーイスラム問題の原点でしょう。9.11の源でもあるでしょう。勉強の足りない私ですが、直感的にそう思います。
分離フェンスは本当に酷い話です。
DAYS JAPAN創刊号に「分断深める巨大壁」という記事と写真があります。
http://www.daysjapan.net/contents/2004-04.html

投稿: n_ayada | 2004/07/24 00:40

n_ayadaさん こんにちは
以前、どこかのリンクをたどってDaysJapanのホームページにたどり着いた事があります。
日本の大手マスメディアが伝えようとしない現状ではDaysJapanのようなジャーナリスト集団の活動が重要なのかもしれませんね。
是非読んでみたいと思います。
情報ありがとうございます。

投稿: FAIRNESS | 2004/07/24 17:44

暑中お伺い申し上げます。興味深い記事をトラックバック頂きありがとうございました。お恥ずかしいのですが勉強不足でよく知らなかったので、トラックバックを頂いた事をきっかけに少し勉強したいと思っております。今後ともどうぞ宜しくお願いします。

投稿: heteheete | 2004/07/25 12:00

heteさん コメントありがとうございます。
私のほうこそ、トラックバックにあったリンクを拝見させていただき勉強になりました。
田中字氏の記事につきましては数学家のメガネさんも「キリスト教原理主義」というエントリーを書かれていました。
blog上には参考になる情報が満載で大変参考になります。
ありがとうございます。

投稿: FAIRNESS | 2004/07/25 21:19

報告が遅くなりましたが、トラックバックさせてもらいました。
分離壁問題は、ガザ地区侵攻と同じくらいのイスラエル側のパレスチナ人への弾圧であり、愚行だと思います。

>パレスチナ問題は「武力を持たない事は理想である」と語る以上に「武力による平和構築などは妄想である」ということを目に見える現実として我々に提供している。(イラク統治にも云えるが)

この辺りは意見が別れる所ですが、この問題(分離壁を含めたパレスチナ、イスラエル問題)が、どのような方向に進んでいくか。
興味を持ち続けて、見続けていたと思います。

投稿: barry | 2004/07/29 01:12

barryさんこちらにもコメント頂きありがとうございます。
barryさんがbarryさんのblogのコメントで言われた

>自分は、「分かり合えない時でも、相手を尊重する」と考えるようにしています。

という部分。
私も「分かり合える」という言葉を使っても、それは互いの違いを認め相手を尊重する事だと思っています。
国と国、民族と民族に限らず個人と個人においても現代社会においては基本的な部分だと私なりに解釈しています。

「極端な原理主義」や「外交での原則論への執着」にはこの要素が入り込めないので本当に厄介な問題だと思います。

投稿: FAIRNESS | 2004/07/29 15:31

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